補聴器調整の基礎知識
お一人お一人の「聞こえ」に補聴器の音を合わせます
補聴器は一人ひとりに聞こえに合わせることによって初めてその真価を発揮します。ここではどんなこと行うか、どんなことに気を使っているか等補聴器調整の基本に関する内容のほんのごく一部をご紹介します。
なお、調整方法には様々な説があり、今なお議論がなされています。また、お一人お一人に合わせる上でここに記載されていない内容も考慮しながら調整を行う必要があります。あくまで参考としてお読み下さい。
音の調整・各機能の設定
補聴器をお客様一人ひとりの聞こえに合わせて調整します。装用者に必要な高さの音は補聴器で音を大きくさせ、補聴器が無くても良く聞こえる音、あるいはその方にとっては不快に感じるような音はあまり大きく出力しないように調整するなど、コンサルティングと聴力測定から得たデータを基にあらゆる点を考慮しながら装用者に適した音を作っていきます。また、各補聴器に搭載されている雑音抑制や指向性、ことば修復機能といった機能の設定も行います。
ダイナミックレンジという概念
外耳道共鳴
人間の耳では通常、耳道の特性により3kHzあたりの音が他の帯域よりも大きく増幅されます。しかし耳を塞ぐようなイヤモールド(耳栓)を使用する場合はこの効果は無くなってしまいます。そこで、そういった場合は、この外耳道共鳴を補完すうような音の増幅に調整することによってより自然な聞こえ方に調整します。
強大音の抑制
補聴器から、耳にとって大きすぎる音は出ないようにすること。大きすぎる音は不快なだけでなく、聴覚細胞を傷つけてしまう恐れもあります。そういった音を補聴器から出さないように設定するこで装用感を改善する共に、聴覚の保護も行います。
コンプレッション(圧縮)
従来のアナログ補聴器ではリニア特性と言い、入力音に対して一定割合の音の増幅しかできませんでした。デジタル補聴器ではチャンネルごとに音のコンプレッション(圧縮)を行うことが可能となりました。聞きたい音の大きさのみを増幅、大きい音は増幅値を下げることで必要の無い音、不快な音を軽減するような調整を行います。
使用用途に合わせたプログラムの作成
補聴器の機種によっては補聴器にいくつかのプログラムを設定することが可能です。「静かな場所での会話」「会議」「講演会」といった種々の状況に合わせた調整のプログラムを補聴器技能者があらかじめ設定しておくことにより、装用者自身の判断で状況に合ったプログラムに変更できるように調整します。
両耳の効果を引き出す
片目では距離感がつかみ難いのと同様に、片耳を塞いでみると聞こえ方が変わって聞こえるかと思います。というのも、耳も両耳を使用・情報を統合することによって音の定位(音源の特定)、ステレオ効果(音が立体的に聞こえる)、騒音下における聞き取りの改善等の様々な機能を発揮しています。ナルホ堂では可能な限り、左右の耳の関係を考慮しながら調整することによって耳が2つある利点を引き出します。また、両耳装用においては片耳のみの装用よりも、音が大きく感じることから、ボリュームを下げる等の調整を行うことによって耳の負担を減らすような調整をする場合もあります。
ダンパーやチューブによる周波数特性の調整
現在は行う機会も減りましたが、補聴器のダンパーやチューブの長さを調節することによって音の質を変化させる場合もあります。ベントといった空気穴による快適さの改善は今でも行います。